記憶の再構成(reconstruction of memory)とは、過去の記憶は絶対的なものではなく、現状に合わせて変化されていくものであるという意味です。
有名な台詞に『他人と過去は変えられない』というものがあります。
人は他人を変えようとしますが、他人を変えることはできないという格言です。
色々な情報を与えて相手の考え方や行動を変えたいと思うのですが、相手は自分の思い通りには決して動きません。
生殺与奪(せいさつよだつ)権を持つ以外は困難だという考え方もありますが、それとて表面上の変化でしかありません。
生殺与奪とは、生かすも殺すも、与えるも奪うも思いのままであることを意味します。
他のものを自由自在に支配することのたとえとして使用される言葉です。
上司や社長、オーナーなど、自分の給料や解雇などに強い影響力持っていて、逆らうことができないというような場合の表現に使われます。
他人を自由にできるというような、絶対的な権力を握っているという意味で、「生殺与奪の権」という形で用いられる用語です。
しかし、いかに強権で表面的には従わせても本質的には他人を変えることはできないという意味が『他人と過去は変えられない』なのです。
ところが、『他人も過去も変える方法』があるのです。
それは、他人を変えるためには自分が変わらなければならないという考え方です。
とても分かりずらいので、ちよっと単純な表現をしますと、ダチョウ倶楽部の上島 竜兵さんのネタにある『どうぞどうぞ』がそうです。
上島竜兵さんは始めやらないという中で、周囲の人が自分が、自分がという流れになり、
結局最後は上島竜兵さんがつられて手を上げてしまい、周りからどうぞどうぞと言われてしまうというギャグです。
これなどは相手を変える典型的な流れです。
しかしながら、実務において使い込むにはかなり難度の高い技だといえます。
では、過去の変え方について考えてみます。
どうやって過去を変えるのかといえば、それは『解釈』を変えるということです。
なんだ、インチキじゃないかと思われましたか?
出来事自体を変えることなど不可能ですが、人間の記憶とは『解釈』として保存されているのです。
そのため、解釈が変わってしまえば事実そのものが変わってしまうことを意味します。
ですのでインチキではありません。
このやり方のひとつに『確証的フィードバック』というものがあります。
では具体的な使用例を見てみましょう。
ある日あなたは、稟議を通すことがかなり難しいと思われる案件を上司である部長に持ち込もうとしています。
当然のように部長にダメだしをされてしまい、突き返されます。
翌日、あなたは再度持ち込み直します。
台詞は以下の通りです。
『部長、昨日は的確なアドバイスをありがとうございました。大変勉強になりました』
続けて『アドバイスしていただいた箇所を部長のご指導により修正してみましたので、ご確認いただけないでしょうか?』
これだけでは稟議を通すことは難しいでしようが、これを何回か繰り返すことによって変化を生み出すことが可能となります。
『部長からアイデアを頂いた企画ですが、再度修正をしてみました。まだ部長の意図を組み込めていない未熟な個所がありましたらご指導ください』
という流れに持ち込みます。
最後は、この企画は上司の部長から出たものになり、それを否定することができない状況にしてしまいます。
企画を起案したのが自分である必要などありません。
失敗したときは自分の責任、成功したら上司のもの、これによって人を動かすことが可能となります。
それでは自分のメリットがない?
そんなことはあのません。
その成功は部下によるものだという上司の潜在意識に対する植え付けは終わり、しかしながら自分にとってメリットがあるという行動が信頼につながるのですから(笑)、次回以降の企画が楽になっていくことを考えればメリットです。
もっと簡単に言えば、顕在意識で反発されるよりも、潜在意識に投げかけた方がお得だということです。
周囲は黙って見ているだけですが、そんなにバカではないので。
かなり雑な表現をしましたが、これが相手の記憶を書き換えるとともに、自分を変えることによって相手を変えてしまうという流れです。
インセンティブというものも関係してきますので、全体のバランスは大切ですが、おおまかな流れとして把握していただければと思います。