POKKA吉田氏特別寄稿 「スマスロ登場前夜にて」
 
みなさま、POKKA吉田ことオカザキです。半年近くでしょうか、お久しぶりです。石川忍さんの友人枠として、今回もお目汚しです。お暇なときにでもご覧くださいませ。
 
さて、メダルレスという言葉が廃れたようなくらいにスマートパチスロという言葉がこの3か月ほど業界を席巻していると言ってもいい。
11月21日以降の導入に向けて、遊技機はもちろんユニットやサーバ、工事の人員などの争奪戦が激化したのが9月。
既に10月半ばを迎えるというこの時期だから、多くの店にとっては計画立案は終わっており、導入可否や見送り等も含めて結論が出ているような状況かと思う。
 
随分古い話であるが、今から20数年も前の時代は、新台入替ですら初日には関係者が遊技もしないのに立ち合いしているというのがホール現場の実態だった。
メーカーや業者の営業マンはもちろん、当該店が重要な店舗ならメーカーや業者の偉いさんまで登場し、背広姿の壮年の方々が開店時に島の外くらいに並んでいる。
また、近隣の店が先行で導入する当該店に視察というか新台そのものをチェックするために来るケースも珍しくはなく、その立ち合いの人数がかなりのケースというのもあったりして(先行導入台数が多いとかいろんな理由がある)、一目で「遊技する人か否か」というのが区別がつくほどだった。
 
そういえば最近、そのような店舗現場をとんとみかけなくなった。メーカーの直営店でのテストロケーション的な先行導入でもそこまでの人数を見かけることはない。
今、あるとすれば新規出店やリニューアル時のグランドオープンくらいであり、このときはさすがに設備関連業者の人も立ち合いに加わるのでかなりの人数になったりすることもあるようだが、それとて目立つようなことは普通はしない。
事務所なり駐車場に止めている車内なり、問題なしとなるまでむしろ目立たないように待機するような立ち居振舞いをする方が多い。
 
スマートパチスロが最も早い導入で11月21日だとしたら、この日はそのような光景が久しぶりに全国的に散見されるような気がしている。
いくぶん回顧主義的な物言いをすれば、業界が活気に溢れていた時代の風景が久しぶりに見られるのではないかと意味があるのかどうかは別にして期待している自分もいる。
 
遊技機そのものや設備関係のさまざまな段取りもあることから、11月21日以降の導入でも地域によっては先行トップ導入となるケースもあるだろう。
だからそういう風景を見ることができる店舗は、全国的に散見されるのではないだろうか。
わざわざ飛行機や新幹線に頼って遠出をすることもなく、できれば近隣もしくは在来線や車で移動できる範囲で見る方が効率的でもある。
私もどこかで目撃することにするだろうし、私の場合は可能なら遊技もしてみたいと思っている。
もっとも、遊技するためには並んで良い整理券番号を引く必要がありそうだから、遊技そのものは初日からしばらくは諦めてもいるが。
 
スマートパチスロ登場前夜の今、店は当たり前だが「先行で導入する店」「導入しない店」にはっきりとわかれることになる。
導入する店はなにぶん初めての「遊技メダルの存在しないパチスロ島」であることから、ハード・ソフト両面でトラブルが出ることなく営業ができることが大前提となるが、もちろん先行で導入できたのだから営業データが良い結果になることも強く求めている。これは早晩遊技客が結論を出すことになる。
 
一方で、導入しない店にとっては、スマートパチスロの業績が今の6.5号機でも優秀な機種(鬼武者など)をはるかに上回るような結果になるとかなり頭が痛いと思うだろう。近い将来に導入を予定しているのならともかく、現在はユニット等も含めた供給不足の状況下で、チェーン店内でも配分されて回ってこなかった店もある。
もちろん、設備投資に二の足を踏んだという理由での見送りもあるだろうし、争奪戦に負けてしまったというケースもある。
大手法人でも中小法人でも、共通しているのは欲しい分だけ入らない、ということであり、思わぬ既存機の販売注文が伸びているという話もちょこちょこ聴こえてくる。
争奪戦の結果が思わしくなく、ひとまず既存機の入替で導入できなかった店が攻める、ということなのだろう。
この点だけ見ても、既存機市場はまだまだこれからもかなりのボリュームを持って継続していくということも言える。
 
今、導入できなかった店が「どのタイミングで導入できるか」という問題と、今回導入する店が「どのタイミングで増台できるか」という問題とは、当たり前だが同じ問題であり切り離せない。
仮にスマートパチスロの業績が絶好調ということになれば、さらにその需要は強まっていくことから、既存導入店の増台と未導入店の導入とを天秤にかけて、各ユニット業者、各遊技機メーカーがどのように配分していくか、ということも気になる話だ。
そもそも特にユニットについては、需要に対して圧倒的に供給が追い付いていないというのが9月の様相であった。
先行導入店はおおむね、各ユニット業者のお得意さん=取引格付上位のところであり、未導入店は意図的に導入を見送ったケースを除けば取引格付上位ではないところとなる。
お得意さんの需要に満額回答が一切できていないというのが一般的なユニット供給の現状だとすると、その次に未導入店に配分していくのか、導入店の増台に配分するのか、はたまた導入店を抱えるもチェーン内に未導入店が多いチェーン法人への配分を優先するのか、これはかなりバランス感覚を要する調整が必要な話である。
 
だから単純に「大ヒット機が本当に登場してから導入を進める」という待ちの姿勢が正解とは限らない。
とはいえ、導入前夜であるから大成功するという保証はない。7月の犬夜叉、カバネリ、アクエリオンという6.5号機3機種の市場活況から急激に需要と期待が激増したスマートパチスロであるが、9月は6.5号機も新機種としては小休止であり、そろそろ6.5号機でも成功しない前例も積みあがっている。
スマートパチスロが思ったほどに業績的に響かなかった場合はむしろ来年以降の配分が需要減退で供給とバランスする可能性もある。
 
という現状は、やはり実に不安定だ。期待と不安が交錯すると言えば月並みであるが、まさに現状はそのようなところである。
単純にこの業界は大きな分岐点に来ているということも言えるだろう。
 
スマートパチスロの導入について「導入しよう」と思ってから導入が可能になるまでのインターバルが、今回の争奪戦の結果にも反映されたように、必ずしもホール側が考える短いものとはなっていない。
争奪戦に勝てば計画通り、勝てなければいつになるかわからない、しかも先行導入での業績が絶好調なら来年早々の導入を今から計画しても9月よりもさらに厳しい争奪戦になるかもしれず、一方で業績がそこまででないならそこは緩和されるかもしれない、というような状況である。
 
要は「今、業績を保証できるものはないが、攻めるか攻めないかの二択はすぐに出さなければならない」という9月の状態は、11月21日以降も続くかもしれない、ということかもしれない。
 
そして来春にはスマートパチンコも登場することになる。ものすごくざっくり言えば、現在ぱちんこは200万台市場、パチスロは100万台市場だ。
先行するパチスロよりも倍の大きさを持つ市場であるぱちんこのスマート遊技機登場を来春に控えていることから、来年早々はこんどはスマートパチンコの登場前夜に向けての争奪戦も展開されることになる。
 
まだまだ「期待は十分できるが一日一日の業績にどこまで響くか結論は数機種では出せるほどには簡単ではないが、攻める(設備投資する)ならすぐにやらないと入らない」という状況が続く。
それがスマートパチスロだけで言ってもしばらく続く上、スマートパチンコも来春には登場するわけだ。状況は流動的であり不明でもあるが、ひょっとしたら供給不安の解消がしばらくないとすれば、向こう一年間くらいはこのような「わからないけど攻めるかどうかはすぐに決めないといけない」状態が続くことになる。
 
ちょっと前までは「リニューアルしたい」などのホールの要望に、各業者はきちんと対応できた。
求める設備や遊技機がたとえ入手が難しいor価格が合わない等があったとしても、リニューアルに向けてスケジュールの帳尻が合う代替案(設備や遊技機など)を提示してもらえたからだ。
 
ところがスマート遊技機はその代替案はない。
必要なユニットやサーバは各種あるが、どれかは必ずないと営業はできないし、遊技機も同じである。
変更承認という行政手続は風営法上は「新規で営業許可を受けるための手続きのうち、変更に関係ないところを端折ったもの」という扱いになっているのだが、今回のスマートパチスロの先行導入をめぐる争奪戦などの攻防劇は、なるほど「新規出店に近い設備等の準備が必要」ということがいえた。
しかもその必要な設備が専門特化型であり、需給が逼迫したのだ。
 
さて、あと一か月と半分ほどでスマートパチスロがスタートする。
導入可否によってスマートパチスロの営業データがどのような感情で目に入ってくるか、人それぞれになるだろうが、ともあれ、こんなに結果がどうなるか知りたい業界トピックスもないだろう。
 
まさに2022年は業界にとってエポックメイキングとなるかどうか。結論は来月末に出る。
 
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