暗黙知(tacit knowledge)
【ビジネス用語辞典】によると、
報告書や方法論、マニュアルなど言葉によって明示できる形式知に対し、個人的な経験により得られる言葉にしにくい知識、ノウハウやコツなどを暗黙知という。
従来のエキスパートシステムでは形式知のみを重視していたが、形式化しにくい暗黙知をいかに表出化して、全社的に共有できるようにするかが、ナレッジマネジメントのポイントである。

※エキスパートシステム  出典: 『ウィキペディア(Wikipedia)』
エキスパートシステム(英語:expert system)は人工知能研究から生まれたコンピュータシステムで、人間の専門家(エキスパート)の意思決定能力をエミュレートするものである。
専門家のように知識についての推論によって複雑な問題を解くよう設計されており、通常のプログラミングのようにソフトウェア開発者が設定した手続きに従うわけではない。
1970年代に人工知能の研究者によって開発され、1980年代にわたって商業的に適用され、AIソフトウェアとして最初に成功を収めた形態である。
日本語訳では専門家システムと言う場合もある。

※ナレッジマネジメント(Knowledge Management ) 出典: 【ビジネス用語辞典】
知識管理、または知識経営と訳される。
個人が個別に持っている知識や経験にもとづくノウハウなどを社内で共有し、より創造的な仕事につなげること。または、その仕組み。
いまやIT(情報技術)の劇的な進化によって、莫大な量の情報が容易に入手できるようになった一方で、必要な情報が大量のデータに 埋没してしまい、活用しきれていないという弊害も起こっている。
こうした課題を解決するのが、ナレッジマネジメント・システムである。
優れたナレッジマネジメント・システムのもとでは、ユーザーはデータソースの違いや情報の登録・分類方法などにとらわれることなく、必要な情報を横断的に収集し、すぐに活用できるようになる。


パチンコ業界において『暗黙知』から『形式知』へと変換されたものに、今は亡き『ゲージ調整』があります。

現在は風適法の解釈から『点検整備』という名称になっていますが、実質的には変わっているわけではありません。

昭和の初期において、ゲージ調整は『営業そのもの』であり、『利益の命』でした。

そして、門外不出の暗黙知だったのです。

まだ関西にはいらっしゃるものの、現在は『釘師』という商売は無くなっています。

まだゲージ調整が暗黙知だった時代、この回り釘師と呼ばれる方々はとても高給な職業でした。

なにせこの釘師の腕によって、店が繁盛するか衰退するかが決まってしまうわけですから。

その当時を知る人から聞いた話では、

店が閉店する頃、釘師の家の前にロールス・ロイスが横付けされるそうです。

そうして夜中に何軒かを順番に回って釘調整をしていくのですが、

腕の良い釘師は、今の金額に換算して月に一千万円以上稼いでいたそうです。

当然ですが、その技術が無償で伝承されるようなことはありません。

また、店と専属契約している釘師もおり、これも高級取だったそうです。

当時の基本ゲージは、ほとんどが『正村ゲージ』か、その変形したタイプでした。

時間がゆっくりと流れている時代ですから、基本を学んでしまえばしばらくはそれで食べていけた時代です。

しかし現在のように十分なデータがある時代ではありません。

少ない(補給・アウト)データから、お客様がどのように感じているのかを感覚的につかめることが大切だったのです。

これが人の経験を通じて得られる、感覚に帰属する『暗黙知』ということになります。

当時パチンコはゲージ調整の問題から、チェーン展開が難しいといわれていました。

そこでその問題を突破するために、ホールコンピューターと計数管理が着目されたのです。

しかしご存じの通り、感覚の全てが形式知に変換できるわけではありません。

それでも多店舗化により、多くの調整者が必要になるという問題に迫られた中で、

合理的かつ効率良く誰でも短い期間に釘調整が習得できるように工夫されていったのです。

そのために、形式知に変換されなかった暗黙知は時間をかけて捨てられていくことになりました。

また現在、パチンコの接客サービスにおいても同じような傾向が出始めています。

確かに合理的で効率的なほど経営の質は高くなるように思われます。

しかしお客様の心に入っていくものは、非合理であったり、非効率であるものだということを、

もう一度考え直すところに来ているのではないでしょうか。

形式知にばかり依存するのではなく、暗黙知をどのように共有化するのかを。