アドボカシー・マーケティング(Advocacy Marketing)
アドボカシー・マーケティング(Advocacy Marketing)

顧客に対して自社の製品・サービスをただ売り込もうとするのではなく、

顧客の立場に立って様々なサービスを提供し、最善を尽くすことによって信頼関係を築き上げ、

長期的な売上の獲得につなげようというマーケティング手法。

米マサチューセッツ工科大学のグレン・アーバン教授が提唱した。

アドボカシーとは「擁護」「支持」といった意味の英語。

市場によっては、過剰な広告宣伝、頻繁なワントゥワンマーケティングではなかなか効果を得られず、

これらの行動が度を過ぎるとかえって顧客のロイヤリティの低下につながる可能性もある。

アドボカシー・マーケティングでは、無償の親切や、場合によっては他社製品を勧めるような顧客第一主義の行動を通じ、顧客ロイヤリティの向上を目指す。

出典: 『ビジネス用語辞典』


ハーバード・ビジネス・レビューに「マーケティングは死んだ」(“Marketing is dead”)というタイトルの記事が掲載された。

この記事を寄稿したビル・リー氏は、従来型のマーケティングが効果を失っており、今後は、マーケティングを顧客と一緒に行っていく必要があると主張している。

リー氏は、広告、PR、ブランディング、広報などの従来型のマーケティング手法はもはや効果がないと主張している。その根拠は以下の通りです。



【購買行動の変化】

人々は、ネットで検索をしたり、ソーシャルメディアの口コミなどを見て購入の意思決定をしている。

従来型のマーケティングで、人々の意思決定に影響を与える事は出来ない。


【マーケティングへの不信】

企業の経営者は、マーケティング部門に対して十分な役割を果たしていないと考えている。

英国での調査によると、以下のようなショッキングな調査結果が出ている。(CEO600人を対象に行った調査)



マーケティング責任者は、売上を伸ばせていない。全体の73%

マーケティング責任者は、マーケティング予算の必要性を説明できていない。全体の72%

マーケティング責任者は、「ブランド価値」を重視するが、それが、株価、売上、利益に繋がっていない。全体の77%


【ソーシャルメディア】

企業の従業員、広告代理店、コンサルタントは、消費者の事を理解していない。

ソーシャルメディアを従来のマーケティングの延長だと考えており、成果が上がっていない。


【アドボカシー・マーケティングの成功事例】

若者の喫煙はいつの時代でも大きな問題だ。

フロリダ州は、喫煙の危険性を伝えたり、タバコを吸うのはかっこわるいというイメージを植え付ける、広告キャンペーンを実施し、全く効果を上げられていなかった。



そこで、やり方を180度変更し、影響力を持つ10代の若者600人を集めた集会を行い、この問題を話しあった。

若者達は、過去の取組みの問題点を指摘し、今後どうすべきか、ブレインストーミングを行った。



その中で、「年配の顧客で死んで売上が減っていくので、若年の喫煙者を増やすべきだ」と書いた、タバコ会社の文書が公開され、若者達は、大きな怒りを感じた。



その結果、若者達は、タバコに反対する学生の会(Students Working Against Tobacco、SWAT)と呼ばれる会を組織し、一大キャンペーンを行った。

自らワークショップを開催したり、Tシャツを販売したりして、地域にメッセージを届けた結果、大きな成果を上げる事が出来た。



タバコ会社の妨害があったにも関わらず、1998年から2007年の間に、10代の喫煙率がなんと半分になったのである。



それまでいかに広告宣伝を行っても、全く効果が無かった問題を、若者達が自ら解決してしまったのである。

リー氏は、このようなアドボカシー型のマーケティングが今後の主流になっていくべきだと主張している。




パチンコにおいて、アドボカシー・マーケティングをどのように導入するのかは決まりがありません。

しかしパチンコのようにお客様との信頼関係がベースになるような商売は、アドボカシー・マーケティングが重要になることは間違いないでしょう。

もはや企業側からの情報発信をそのまま信じてくださるような方は少なく、お客様同士による情報が重要視されているのが現状です。

ましてや、今のパチンコのように年々勝てるお客様数が減少している状況において、店側の一方的な情報など大きな意味を持ちません。

インターネットという情報インフラが整備されてしまった今、企業側の都合による情報操作など不可能に近いとさえいえるのです。

もともとパチンコは、既存のお客様によって新規のお客様が連れて来られるものでした。

それがここ最近、パチンコを遊技しているお客様自身が止め時を探している状況ですから、新しいお客様を連れてなど来てくれません。

遊技機主導による市場開拓が行き詰った状況において、ホール主導による市場開拓が行なわれなければなりません。

しかし長きに渡り遊技機主導に依存し続けてきたため、ホールにはお客様を引き付けるノウハウが完全に不足してしまったのです。

イベントの規制などは表面的なものでしか、お客様との関係性を構築するという基盤に対しての不足といえます。

これに対する大きな要因は、遊技機に依存すれば成果を期待できたので、他の努力をする必要がなかったからです。

ましてや、人材の育成などといういつ成果に結びつくかもわからないことに対する投資など意味がないという考え方になったのでしょう。

表面的な接客という部分においては大きく変化してきましたが、潜在的な関係性という部分においては未熟なままなのです。

人の心理に対する情報接触環境が変化したにも関わらず、それに対応することができないままにあるということになります。

つまり、従来通りに新聞の折り込み広告を出し、新台入替のDMを出す、という固定観念にとらわれたままだということです。

若年層の取り込みが騒がれていますが、これまでの延長線上ではとうていかなわないことです。

現在来店してくださるお客様を大切にし、これまで以上に満足していただけるような努力をしない限り、プラスへの反転は難しいといえます。

そのキーワードになるものがアドボカシー・マーケティングです。

アドボカシー・マーケティングは概念として難しく、実際にはどのように運用すればよいのか分かりにくいのが実情です。

お客様から『北斗の新台はないの?』と聞かれれば、

『駅前の○○ホールにあると聞いていますので、よろしければそちらをご利用ください』とお答えする。

などの応対事例ともいえます。

反対事例としては、

『ご利用ありがとうございました』と笑顔でご挨拶。

自分たちの商売を分かっていなければ、このような間違いに気が付くことも、問題視することもないのです。

毎日の業務において、どのようにして既存のお客様を満足させていくのか必死に考えることが、アドボカシー・マーケティングだといえるのではないでしょうか。

できないという前提に立つのではなく、必ずできるのだという前提に立つことが重要だといえそうです。




※【例】出玉と交換した端玉のチョコレート1つを憶えていて、問題がなかったかを質問する。