2021年 POKKA吉田さん 年末SP寄稿 ~来年の事でも触れてみます~

他愛もない会話の中で石川忍さんから「何か書いてよ」と言われてすぐにわかったと返事
したのが11 月のある日のこと。そして何も書かずに気が付けば年末。これはまずいと思い
出して12 月27 日の晩、パソコンの前に座ってこの稿を用意している。日付は既に28 日に
なった。
申し遅れました。私、POKKA 吉田ことオカザキと申します。大阪から発行している小さな
業界紙「月刊シークエンス」の発行人と編集長も兼務しております。フリーランスでいろ
んなところで記事を書いたり、頼まれればファン向けの番組などにも出演したりしており
ます。基本的には頼まれた仕事のうち可能なものだけを引き受けて細々とやってきました。
シークエンスの責任者ではありますが、東京は足立区在住です。月刊シークエンスの編集
作業はコロナ禍とは無関係に私が引き継いだときからずっとリモートワークです。なお、
今年から石川忍さんに弊紙にて連載をしていただいております。それもあるので失念する
なんて今年一番の失態かもしれません。何卒ご容赦のほどを。
さて、何でもいいよ、とは言われても、私は業界のことしかわからないわけですので、業
界のことを綴ってみます。ちょうど年末ですから来年のことでも触れようと思っておりま
す。その中でも旧規則機撤去と新規則機の緩和の「はざま」の話をしようと思います。
新規則が施行されてからもうすぐ四年が経過します。このタイミングで旧規則機は完全撤
去となりますが、これは21 世紀会決議の有無にかかわらず風営法上の義務です。撤去しな
ければ風営法第20 条1 項の遊技機規制違反というものに該当します。だから旧規則機はも
うすぐ市場からなくなります。
本来は今年の1 月末が旧規則機の経過措置の期限となるはずでしたが、2020 年5 月に国家
公安委員会が規則附則を改正して経過措置が一年間延長されました。だから「2022 年1 月
末が期限になる」はずなのですが、一部の府県においては機種によってそれよりも少し先
に期限があるものもあります。多くの地域においては最長で1 月末なのですが、最長でも
っと先の期限というところもそれなりにあるということです。これは新規則施行「前」の
「前倒し認定」における警察本部の行政手続きの処理の問題でして、手続きとしてはこう
なってしまったところがあります。これが一つ二つの県であれば、確実に当該警察本部は
警察庁から怒られていたことでしょう。警察庁の想定した行政手続きとこの実態が異なる
からです。しかし、実際には一つ二つではなかったことから2 月以降の地域の本部がもの
すごく怒られたという話は聞きません。
こうなると、私の中では業界あるあるの「越境問題」が浮上するところがでてくるかもし
れない、という懸念があります。越境問題とは、要するに「都道府県や市区町村が道路や
川を挟んで異なっている場合、有利な地域へ不利な地域から客が流れる」ということを指
しています。
このケースが目立ったのは、最近では交換率だと言えるでしょう。2011 年に警察庁は全国
的に一物一価の指導を実施しました。同時に二物二価もNGとこちらは根拠なく指導しま
した。これによって、当時の収益構造からパチスロを優先するためにぱちんこの分岐割数
を10 割にするという店が全国的に続出していきます。
ただし、警察本部から遊協組合への指導となった時期は地域によって異なります。おおむ
ね指導がいきわたったくらいの段階になる前後から、脱等価の取り組みが進んでいくよう
になってきました。
みなさんよくご存じのとおり、脱等価は「みんなが守らないと意味がない」わけです。よ
ほど市場に影響を与えないような店だけが守らないというのなら別ですが、地域の一番店
や二番店クラスが皆守るからその地域は脱等価が実現できます。そうじゃなければ等価(10
割分岐)を続けている店に客が流れていきます。
地域でやるということで、遊協組合が旗を振るケースが多かったわけです。ところが遊協
組合は都府県方面にて構成されています。このため、自県が脱等価をやったとして隣県が
等価のままだった場合、隣県に客が流れるということになりがちです。この現象は東京都
の脱等価の際、私も直接見聞きしております。
まあ、脱等価の話はやりだすとこれまた深いので置いておくとして、要するに旧規則機撤
去については「越境問題」が介在してしまう地域があると思っているわけです。
私の立場では、業界全体を広く見通すような鳥瞰的視点にて論説を組み立てて記事にしま
す。このため、旧規則機撤去については次のようなシナリオを書くわけです。
・旧規則機が完全撤去(1 月末)
・新規則機の規制緩和トレンドが2022 年も維持される
・このため、2022 年2 月が市場の底となり、そこから先は遊技機性能的な要因での市場推
移はポジティブ材料がずっと続いていくので、底を耐えることができた店は2022 年以降は
かなり展望が見込める
本稿の趣旨とは異なりますが、このシナリオの前提である「新規則機は既存機(P機、メ
ダルの6 号機)は2022 年も規制緩和が続く。さらにはスマートパチンコ、スマートパチス
ロ(次世代遊技機、管理遊技機とかメダルレスと呼ばれたもの)の性能規制もホール営業
に有利なものとしてスタートしていく見込み」みたいな話は、これまたそれだけで深い話
になるので置いておきます。しかし、この前提を持っても単純に2 月1 日が底だからここ
から先は良いことが多くなりますよ、ということを言いづらい店があるということは言っ
ておきたいわけです。
府県によって、機種によって経過措置の最終期限は異なります。また、大阪府は特に前倒
し認定の処理が無茶苦茶になっておりまして、通常はどこの警察本部も検定有効期限を起
点に認定手続きをすることから、同一県内の同一機種については認定期限日は同じになる
のですが、大阪府警は同一機種でも店によって日付が異なっているという話を聞いており
ます。もうこうなると、「この機種が設置されていたから違法だ」とは外からはわからない
わけでして(その店の認定期限日は外から見てもわからない)、わかるのは警察と当該店舗
だけ(及び認定手続きを担った業者)、ということになります。
また、一般的には「自店の各機種の期限日はずいぶん前からチェックして把握している」
ものです。撤去計画には導入計画もセットですし、減台するにしても計画は事前に必要な
わけです。が、「隣県の各機種の期限日をずいぶん前からチェックしている」店は案外少な
くて、おそらくですが、今のタイミングから1 月にかけて「おいおい、あの地域は隣県に
なるからあの機種があの店にはしばらく残り続けるぞ」みたいなことが発覚していくこと
になるかと思います。
となると、越境問題が発生しやすい店、すなわち県境付近に立地し隣県の店ともがっつり
競合しあっているところ、にとっては「市場の底を迎えたのであとは回復していくだけ」
ということにならず「市場の底からさらに続きのより深い二番底がある」という状況にも
なりかねません。
一般論ですが、越境問題が発生する店というのは限定的です。たとえば東京都が脱等価を
した際に特に神奈川県に客が流れたという話をよく聞いたのですが、私が住んでいる地域
は神奈川県が遠いことからまったく関係がありませんでした。また、埼玉県や千葉県は私
の住んでいる地域から遠くはないですが、地域経済圏として近いということも実はありま
せん(もっと近いところもあるかと思いますが)。影響されるのは道路事情、鉄道事情など
もありますし、店の立地状況に左右されるわけです。
だから、この稿を読んでいる人の中で私のこの数か月の主要言説である「2 月に市場の底→
そこから先は回復基調」というものについて、間に二番底のような越境問題による悪影響
が出てくる可能性がある店もありますよ、ということを申し上げておきたいと思います。
ここの読者が私の日常の言説について読んでいるかどうかはわかりませんが、地域やケー
スを限定すると、業界全体の鳥瞰的視点からのシナリオ推移とは異なる推移を見せること
も多々あるということはわかっていただきたいかな、と思います。
いずれにせよ、一番底で終わるか二番底があるにしても、底が必ずあるのが旧規則機の撤
去です。隣県に客が奪われたとして、その奪った店の旧規則機の期限が一年も二年も先に
なっているはずがないからです。こうして、全国的には春遅くともゴールデンウィーク明
けには「確実に底」を迎えており、そのあとは規制緩和の恩恵を市場でたくさん得るため
にさまざまな施策を実施していくことになるかと思います。その回復シナリオそのものは
変わりません。だから二番底を警戒しなければならない地域においては、今から考えられ
る対応策もありませんので、想定シナリオの書き換えを要することになるかと思います。
私の方は問題ありませんのでまた石川忍さんから頼まれれば寄稿しようと思います。なお、
そのときは失念しないようにしたいと申し上げて本稿を了としたいと思います。__